©Rijksmuseum
死と生を考えさせる「メメント・モリ」。
メメント・モリは、時代の移り変わりの中で数々の芸術作品の礎となり、現代にも伝えられてきました。
今回はそんなメメント・モリについて、その歴史や芸術作品、イギリスで収蔵されているメメント・モリ・ジュエリーや《momocreatura》のインスピレーションなどをご紹介します。
メメント・モリとは?
「メメント・モリ」(memento mori)とは、「死を忘れることなかれ」という意味があるラテン語の言葉です。
「人間の脆さ」や「命の短さ」を表現し、死が身近にあることを私たちに思い出させます。メメント・モリは、思想や芸術作品などに強い影響を与えてきました。
メメント・モリの歴史
「メメント・モリ」という言葉が誕生したのは、古代ローマ時代。
勝利に酔いしれる兵士たちの傲慢をたしなめる目的で、軍の統制のために使われていました。
その後14世紀中頃になると、ヨーロッパではペスト(黒死病)が爆発的に流行し、「メメント・モリ」をテーマとした絵画が多く描かれるようになりました。
『死の勝利』1446 作者不明フレスコ画
unknown master (Maestro del Trionfo della Morte)
そして17世紀初頭の宗教戦争による荒廃や、分裂した不安定な時代を背景に、メメント・モリは数多くの芸術作品の主題として用いられるようになったと伝えられています。
ポジティブな意味を併せ持つメメント・モリ
メメント・モリは「死」を思い出させることで、「生」を考えさせるものです。
命のはかなさを喚起させつつも、今この瞬間に生きていることを改めて感じさせるという、ポジティブな意味合いを併せ持っています。
そしてメメント・モリは過去のものではなく、今の時代を生きる私たちにもポジティブなメッセージを与えてくれるものです。
例えばアップルの創業者であるスティーブジョブスは、米スタンフォード大学でのスピーチで次のように述べています。
“Remembering that I'll be dead soon is the most important tool I've ever encountered to help me make the big choices in life. Because almost everything ― all external expectations, all pride, all fear of embarrassment or failure - these things just fall away in the face of death, leaving only what is truly important. Remembering that you are going to die is the best way I know to avoid the trap of thinking you have something to lose. You are already naked. There is no reason not to follow your heart.”
引用元:「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳
米スタンフォード大卒業式(2005年 6月)にて(日本経済新聞)
スピーチのポイントは下記のとおりです。
・自分は常に死と隣り合わせという認識は、重大な決断を下す時に最も役に立つ
・プライドや失敗する不安は、死の前には何の意味もなさなくなる
・死を思い出すことは、失敗への不安にとらわれない最良の方法である
このようにメメント・モリは、死が誰にでも平等にやってくるということを思い出すことで、今をより良く生きるというポジティブなメッセージを私たちに与えてくれます。
芸術作品としてのメメント・モリ
メメント・モリは、時代によってさまざまな描かれ方をされてきました。
その代表ともいえる「死の舞踏」(Dance of death)は中世末期、ペスト流行が去ったあとの15世紀頃に盛んに描かれ、絵画だけでなく文学や音楽など幅広い芸術のテーマとして扱われました。
「死の舞踏」では死の象徴である骸骨と、あらゆる人々が踊りながら墓場に導かれるシーンが描かれます。
©The Metropolitan Museum of Art
死は年齢・職業・身分に関係なく誰にでも平等にやってくるもの。
ドイツの画家バーント・ノトケによる「死の舞踏」では、王や王妃、教皇などが死神によって墓場に導かれる様子が描かれています。
Bernt Notke, Surmatants (Totentanz) from St. Nicholas' Church, Late 15th century
©️Art Museum of Estonia
この作品は、どのような社会的地位の人にも死は必ず訪れるというメッセージが込められています。
メメント・モリ・ジュエリー
「メメント・モリ・ジュエリー」とは、骸骨、頭蓋骨、棺などをモチーフにしたジュエリーです。そこに大切にしたい考えや記憶をしるし、日常的に死を思い出させます。
イギリス国内のミュージアムでは、メメント・モリ・ジュエリーを実際に見ることができます。その象徴的なジュエリーの一部をご紹介します。
Memento mori ring with skull and cross-bones, 17th century (1601 - 1700)
© University of Oxford - Ashmolean Museum
これらのジュエリーはそれぞれ大英博物館、V&A、アシュモレアン博物館で展示されています。興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
魔除けやお守りになるスカルのモチーフ
スカルに対して、少し怖いイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。
しかしスカルのシンボルは、ヨーロッパでは古くからお守りや魔除けとして使われ、一部の宗教においては「永遠・再生」を表現すものとされています。
スカルの見た目は「死」のイメージに近いように感じられるでしょう。
しかし死の対極には「生」があり、両者はそれぞれ点ではなく、同じ線上に繋がっているものであることから、スカルのモチーフは生命力の象徴ともみなされています。
そのように考えると、スカルモチーフのジュエリーは魔除けや、苦境を乗り越え、未来を自ら切り開いていく(再生の)お守りになるともいえるでしょう。
momocreaturaのインスピレーション
《momocreatura》では、スカルをモチーフにしたジュエリーが数多くあります。
その背景には、《momocreatura》のデザイナーとメメント・モリにまつわる作品との出会いがありました。
その作品は「Torre Abbey Jewel」。英南西部デヴォンで発見され、ロンドンにあるV&Aで所蔵されています。
一般的に、美しいとされているものがジュエリーのモチーフとして扱われる中で、ストレートに「死」が表現されているこのペンダント。
リアルな骸骨が華麗な装飾を施された棺桶に入る様子は、まるで相反するものが共存しているかのように感じられます。
Torre Abbey Jewel, 1540-1550
© Victoria and Albert Museum
死を象徴するもの(消滅するもの)の中にある美しさ。その衝撃的な魅力は、《momocreatura》のジュエリーに強いインスピレーションを与えました。
既成の概念に疑問を投げかける《momocreatura》のスタイルは、このジュエリーとの出会いによってもたらされたといえるでしょう。
死と生を想うメメント・モリ
もうすぐやってくるハロウィンは、かつてケルト民族の間で「死者の国と現世の境目があいまいになる日」と考えられていました。
死と生の距離が近づくこのタイミングだからこそ、メメント・モリのメッセージについて、改めて考えてみるのも良いかもしれません。
「死を忘れることなかれ」というメメント・モリは、死が身近にあることを私たちに思い出させ、今をより良く生きるメッセージを与えてくれます。
メメント・モリ・ジュエリーを身につけることは、そのポジティブなメッセージを享受するきっかけになるでしょう。
《momocreatura》ではメメント・モリのインスピレーションをもとに製作したリングの他にも、多数のスカルジュエリーを展開しています。
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